現状に争う人へ。新世代からの応援ソング / 欅坂46『サイレントマジョリティー』歌詞の意味と解説

欅坂46,歌詞解説・考察

2015年、秋元康総合プロデュースの乃木坂46に続く「坂道シリーズ」第2弾として結成された「欅坂46」

その1年後の2016年。1stシングルとして発売された「サイレントマジョリティー」“10年に一度のポップソング"とも言われ、そのクオリティの高さから、アイドル業界はもちろん多くのミュージシャンや芸能人・音楽評論家から高い評価を得ました。

欅坂46

その評価は売り上げにも現れており、CD発売初週のオリコンチャートでは1位を獲得、さらに累計売上枚数が発売5日目にして25万枚を突破し、女性アーティストのデビューシングル初週売上で歴代最高記録を更新。
そんな衝撃的なデビューで欅坂46の名前は一躍有名となり、現在の大躍進へと繋がるのでした。

そんな「サイレントマジョリティー」は、作詞を秋元康、作曲は2人組音楽ユニットのバグベアがそれぞれ担当しており、バグベアは他にも同グループの楽曲「不協和音」の作曲も担当し、欅坂46楽曲の黄金期を支えた作曲家の1組です。

そんな楽曲にメンバーが繰り出す圧倒的なパフォーマンスが加わった、まさに神曲と呼ばれるこの楽曲は、ファンからも“欅坂46の初期の代表曲”とも呼び声の高く、僕もこの楽曲には強く心を動かされました。

サイレントマジョリティーとは

そもそも「サイレントマジョリティー」という言葉は、
“サイレント"と"マジョリティー"の二つの英語から構成されている“silent majority"から来ており、一般的には「静かな大衆」あるいは「物言わぬ多数派」という意味で使われているようです。

要約すると、何かの選択を迫られた時、声を大にして発言をしたり、行動を起こしたりはせず、皆の意見に従う人達の事を差しています。色々な柵があって物事を諦めてしまったり、誰かに任せてしまうなんてことは、皆さんも身に覚えがあるのではと思います。

ダメだとは分かっていながらも、自分の為の一歩がなかなか踏み出せない。
そんな悩みと日々戦う人が多い現代だからこそ、ここまで多くの人々の心に刺さっているのではないでしょうか。

そんな「サイレントマジョリティー」の魅力、歌詞に秘められたメッセージを考察していこうと思います。
皆さんも是非こちらを参考に歌詞の意味を御自身なりに読み解いてみてください!!

募る不信感

まず初めに、この楽曲には「僕」「君」という2人の登場人物を軸に歌詞(物語)が進行していると考えられます。より分かりやすく解説するに当たり「僕」「君」それぞれの心情や行動として考えて考察していきます。

人が溢れた交差点を どこへ行く?(押し流され)
似たような服を着て 似たような表情で …

群れの中に紛れるように 歩いてる(疑わずに)
誰かと違うことに 何をためらうのだろう

出典: サイレントマジョリティー/作詞:秋元康 作曲:バグベア

Aメロは、人々が生きる現代の日常生活を切り取ったような歌詞です。
スーツや制服姿といった、それぞれの生活や職業などによっていつの間にか浸透していった、個性を感じない、似たような服という名の、常識を着せられている描写
またそんな常識や社会に疲れている様子“似たような表情"というフレーズで表現されているのかと思います。

そんな生活に疑問も持たずに生きる(持っていないように見える)人々の群れに、主人公である「僕」不信感を覚えている様子。確かに人間(特に日本)は周りに合わせ、群れるのが「正義」で、それに反するものは「悪」のような風潮が感じられますもんね。

大人になるとは…

先行く人が振り返り 列を乱すなと
ルールを説くけど その目は死んでいる

出典: サイレントマジョリティー/作詞:秋元康 作曲:バグベア

Bメロでは、そんな不信感を払拭したいとの思いで、「僕」は自分の思うように、やりたいように行動を起こそうとしたのでしょう。ですが、先行く人と表現されている両親や先輩・上司などの大人達が、ルールという名の縛りを説いて(押し付けて)くるわけです。

ですが、よく見るとそんな大人達の目も死んでいるように思えます。
大人達も今の「僕」と同じように、かつては社会や大人に反抗していたのではないでしょうか。しかし、大人になるにつれ、様々な壁にぶつかり、自身の考えが通用しないことが増え、世間で求められるのは個性ではなく協調性

社会における自分の主張や思いが「少数派」であること、協調性がないと咎められる、周りからの非難に疲れた先行く人達は、いつからか自分の想いを殺し、ルールを説く側の人間になってしまったのです。

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立ち上がれ!!静かな大衆よ!!

君は君らしく生きて行く自由があるんだ
大人たちに支配されるな
初めから そうあきらめてしまったら
僕らは何のために生まれたのか?


夢を見ることは時には孤独にもなるよ
誰もいない道を進むんだ
この世界は群れていても始まらない
Yesでいいのか?
サイレントマジョリティー

出典: サイレントマジョリティー/作詞:秋元康 作曲:バグベア

それでも「僕」そんな大人にはなりたくない!!
キャッチー且つ、力強いメロディも相まって、サビでは「僕」の強い意思が伝わってきます。
若さ故と言われてしまうかもしれませんが、自分が自分を諦めずに可能性を信じ「僕」そして「君」を必死に鼓舞しているのが分かります。

“夢を見ることは時には孤独にもなるよ"と、自分自身が叶えたい夢を見るということは独りになることだと「僕」は分かっているのです。

それは想像よりもきっと辛く、怖いことで、そんな時ほど周りの全ての人が敵に見えてしまうこともあるはず。ですが、笑われない為、傷つかない為に、大人達が支配する世間に属し、そんな人々と群れ、個性を殺して生きるくらいなら“誰もいない道を進むんだ"「僕」は決意し、自分自身の答えとしてNo!!を突き付けます。
そして「静かな大衆」に同じ質問を問いかけます。「君」の答えは“Yesでいいのか?"と。

選べる自由

どこかの国の大統領が 言っていた(曲解して)
声を上げない者たちは 賛成していると…

選べることが大事なんだ 人に任せるな
行動しなければ Noと伝わらない

出典: サイレントマジョリティー/作詞:秋元康 作曲:バグベア

2番Aメロの冒頭”どこかの国の大統領が 言っていた(曲解して)声を上げない者たちは 賛成していると…”
と歌っていますが、これは1969年11月3日、当時のアメリカ大統領“リチャード・ニクソン"の発言からきているようです。

人には本来、様々な選択肢、つまり選べる自由が存在します。しかし必ずしも、全てを思うがままに選べるわけではありません。そして大人になればなるほど、その選べるはずの自由が取り上げられ、いつの間に自分の意思は伝えず、けれど自分の考えと総意が違えば非難をする。そんな大人達が生み出されてしまうのです。

この楽曲では、人に任せるのではなく自分の意思を伝えるという、そんな当たり前の大切さをより強調する為にこの発言が引用されているのだと思います。意思を伝えない(声を上げない)事は、実質賛成しているとみなされ、Noという本心は伝わらないのです。

それまでの歌詞にあったように「群れる」ということがダメなのではなく、自分の意思がそこにあるのか。
自分で選んで行動しているのかが大事だと説くと同時に、何も行動を起こさないだけのサイレントマジョリティーに対する皮肉を込めたメッセージのようにも思えます。

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自分の意思

君は君らしくやりたいことをやるだけさ
One of themに成り下がるな
ここにいる人の数だけ道はある
自分の夢の方に歩けばいい

見栄やプライドの鎖に繋がれたような
つまらない大人は置いて行け
さあ未来は君たちのためにある
No!と言いなよ!
サイレントマジョリティー

出典: サイレントマジョリティー/作詞:秋元康 作曲:バグベア

そして2番サビ。1番サビと同様「君」に対し、強いメッセージを放っているのと同時に“One of them(その他大勢)に成り下がるな"、つまり「僕」群れる事に対して明らかに悪いイメージを持っているのが伺えます。

世間では、協調性を重視するあまり、誰かと群れる事で失敗を回避しているつもりの人々が多く存在します。
勿論それが間違いというわけではないですが、例え誰かと群れていたとしても、人間誰しも失敗する時は失敗をします。
果たしてそんな時に、周りにいる人々はその失敗に対して何らかの責任をとってくれるのでしょうか?答えはきっとNo!!です。

ならば周りがなんと言おうと、皆がそれぞれの道を、自分の夢の為に生きるべきだと「僕」は考えているのだと思います。
大人になればなるほど、地位やお金などで他人からの評価が下され、結果そこに固執してしまい本当の自分を見失いがちです。果たしてそんな今の自分は過去の自分が心から望んできた姿だったのか?

そう、再度問われているように思えます。
ここまで力強くストレートな表現は、形容し難い心にグッとくるものがありますよね。

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最後通告

誰かの後 ついて行けば 傷つかないけど
その群れが 総意だと ひとまとめにされる

出典: サイレントマジョリティー/作詞:秋元康 作曲:バグベア

そしてCメロ。
これまでの歌詞、この楽曲の伝えたいメッセージの集大成であり、「僕」からの最後通告のようにも思えます。

誰かに便乗して生きていけば、決断を仰ぐことで自分は苦労をせず責任も負わぬまま、傷付かずに済むかもしれません。ですが、自分の本心は伝わらないまま、群れという1グループの意見として相手には伝わり、いずれは自ら考えることも悩むこともないまま、誰かの意見を盾に生きていくことになり、自分の価値が死んでしまいます。

「僕」から「大人達」へ

君は君らしく生きて行く自由があるんだ
大人たちに支配されるな
初めから そうあきらめてしまったら
僕らは何のために生まれたのか?


夢を見ることは時には孤独にもなるよ
誰もいない道を進むんだ
この世界は群れていても始まらない
Yesでいいのか?
サイレントマジョリティー

出典: サイレントマジョリティー/作詞:秋元康 作曲:バグベア

そしてラストのサビ。歌詞は1番と同じですが、これまでの考察を経て見てみると、感じ取れる意味合いも少し変わってくるのではないでしょうか。

初めは、未来に向けてこれからを生きる「君」への歌であるように思えましたが、この楽曲でいう「君」は単に若者だけでなく、今を懸命に生き、悩み、苦しんでいる大人達にも向けられたメッセージでもあることが分かります。

自分の思う普通が必ずしも世間にとっての普通であるとは限りません。
と同時に、その変えられようのない事実を前に、僕らはただただ諦め、世間によって作られた普通に支配されてはいないでしょうか。

今でこそ、様々な場面で個々の生き方が容認され始めている現代ですが、まだまだ問題は山積みです。
ですが孤独を恐れず、自由を求め、まずは自分が変わろうと決意することで本当の自分に出会えるのではないかと思います。

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MV感想とまとめ

さて今回は欅坂46「サイレントマジョリティー」の歌詞解説・考察をしてきました。

一からしっかりと歌詞と向き合うことで、その奥深さが非常によく分かりました。
そして何より、欅坂46というグループ(群れ)に属しているはずの彼女達が、同じ衣装を身に纏い、大人達に支配されている“アイドル"であるにも関わらず、この歌詞を歌うという矛盾にも思える彼女達への印象がプロデューサーである秋元さんの狙いなのではないかなと、ついつい深読みをしてしまいました。

確かに人間ってギャップには弱い生き物ですから(個人的意見ですがw)、MVではこんなに可愛らしい彼女達が力強く歌うギャップのある姿を見て、様々な方の心により強く残る理由がよく分かりました。

そんな彼女達一人一人がこの「サイレントマジョリティー」を歌い、これからアイドルとして生きていく中で、アイドルとして、1人の人間として様々な選択肢の中から何を選ぶのか。
今後も活動と共に、様々な歌詞を解説・考察していくことで見守っていきたいと思います。

-2020/10/15 追記-

先日行われた欅坂46 LAST LIVEの本編最後の楽曲として「サイレントマジョリティー」が披露されたそうです。この曲から欅坂46の歴史が始まり、この曲で歴史に一旦幕を閉じる。長いようで短い5年間でしたが、今後も1ファンとして彼女達を応援しようと思います。

長くなりましたが今記事をご覧頂いた皆様、ありがとうございました!!