本当は「希望」の曲!? 不協和音であるという「誇り」 / 欅坂46『不協和音』歌詞の意味と解説
今回ご紹介するのは、2017年4月5日に発売されました「欅坂46」4枚目シングルの「不協和音」です!!
今楽曲でもセンターを務める平手友梨奈のサビ直前の名台詞「僕は嫌だ!」で有名な「不協和音」ですが、ファンの間ではグループ史上最高難度のダンスと言われており、欅坂46として4年連続出場した紅白歌合戦では、2017年,2019年出演の際にも披露されました。
また2017年出演時は、当時総合司会を務めていた内村光良さんも加わったコラボステージもあり、紅白歌合戦だけでも計3回披露するほど、芸能界でも「不協和音」の人気は折り紙付きです!!
しかしながら同楽曲は、心身ともに消耗度が激しく、躊躇のない倒れ込みによって怪我のリスクも伴うことで知られており、紅白でのコラボステージ終了後にはメンバー数名が気を失うように後ろに倒れ込む姿も映るなど、当時のSNS上でも大きな騒ぎとなりました。
それ以来、歌番組だけでなく、欅坂46主催のライブでも披露されていなかった「不協和音」が、欅坂46初の東京ドーム公演で1年9ヶ月ぶりに“封印”が解かれ、さらにその年の紅白歌合戦での「不協和音」の披露が決まると、ツイッターのトレンドで1位になるなど数々の伝説を残してきた1曲です。
不協和音とは
そんな「不協和音」は、原点回帰を狙い制作された楽曲だそうで、そのような背景から「サイレントマジョリティー」以来のタッグとなる、作詞:秋元康、作曲:バグベアが今回の制作に携わっています。
今回タイトルに付けられた「不協和音」という言葉は、"二つ以上の音が同時に出された時、全体が調和せず不安定な感じを与える和音"の事を言います。アイドルという統率が取られている彼女達がこの楽曲を歌うことに、果たしてどんな意味やメッセージが隠されているのでしょうか。勘の良いファンの皆様は色々とお気づきかもしれませんね。笑
さて!!そんな「不協和音」の魅力、歌詞に秘められたメッセージを考察していこうと思います。
皆さんも是非こちらの記事を参考に歌詞の意味を御自身なりに読み解いてみてください!!
強い意思
僕はYes と言わない 首を縦に振らない
出典: 不協和音/作詞:秋元康 作曲:バグベア
まわりの誰もが頷いたとしても
僕はYes と言わない 絶対 沈黙しない
最後の最後まで抵抗し続ける
まずAメロ冒頭、“僕はYESと言わない 首を縦に振らない"との決意表明、周りとの意見の食い違いと既に戦っている様子が見受けられます。どんな問いかけに対しての返答かは定かではありませんが、全員が「YES」と声をあげる中、「NO」と口に出すことは、とても勇気のいることだと思います。
特に、日本人は日常生活を円滑に進める為に、多少の我慢や同調は致し方ないと考えてしまいがちな印象です。
しかし嫌な事に目を背けて、自然と周りの意見に流され、同調してしまうのが「僕」には到底許せないことなのでしょう。
さらに「僕」は「YES」と言わないだけでなく、自分の思いをしっかりと相手にぶつける(沈黙をしない)事で、戦おうという強い意思を感じることができます。
僕は嫌だ!
叫びを押し殺す(Oh!Oh!Oh!)
見えない壁ができてた(Oh!Oh!)
ここで同調しなきゃ裏切り者か
仲間からも撃たれると思わなかった
Oh!Oh!僕は嫌だ!
出典: 不協和音/作詞:秋元康 作曲:バグベア
しかしながら、そう簡単に物事は解決しません。
自分にとっての悪や不正と闘うことは決して悪い事ではありませんが、周りと同じ「YES」の選択をしないことで、周りとは距離ができてしまい、その中での様々な弊害(見えない壁)が生まれてしまうこともあるのです。
そしてそれは時に、仲間だと思っていた人との見えない壁にもなり、まるで「僕」は裏切り者のような扱いを受けてしまいます。
僕たちの日常でも、自分の意見を言えない人の多くは、裏切り者呼ばわりされることや仲間外れにされることを恐れるあまり、周りに同調してしまいがちです。そうと分かりながらも、自分を貫き通そうとする「僕」は、結果仲間から糾弾されてしまうのでした。
そしてそんな周囲からの同調圧力に耐えきれなくなった心の叫びが、
“僕は嫌だ!"
この一行に込められたこれまでの「僕」の想いが爆発されます。
楽曲中は勿論、実際のライブでの平手友梨奈さんの“僕は嫌だ"は、ライブ毎に違った感情を表現していて、時に力強く、時に悲しさや憂いを前面に出しながら、魂の叫びを爆発させる瞬間はファンならずとも鳥肌ものです。
正義か、死か
不協和音を 僕は恐れたりしない
出典: 不協和音/作詞:秋元康 作曲:バグベア
嫌われたって 僕には僕の正義があるんだ
殴ればいいさ 一度妥協したら死んだも同然
支配したいなら 僕を倒してから行けよ!
1番サビでは、「僕」の解放した想い、そして自分なりの正義を胸に戦う決意が感じ取れます。
聴こえてくる不協和音は恐らく「僕」と周りの調和が崩れていく音ではないでしょうか。
周りが敵だらけになり、かつての仲間に殴られたとしても、「僕」にとって掲げた正義をねじ曲げる事は“死んだも同然"。つまり決して折れない強く堅い意志が「僕」にはあるのです。しかし、ここまで頑なである理由は一体何故なのでしょうか?それは1番サビ以降で明らかになってきます。
自分の決意、正義を貫ける人の素晴らしさを訴えると同時に、
それがどれほど難しく過酷なものなのかが、このサビからは感じ取れましたね!!
「君」への問いかけ
君はYes と言うのか 軍門に下るのか
理不尽なこととわかっているだろう
君はYes と言うのか プライドさえも捨てるか
反論することに何を怯えるんだ?大きなその力で (oh、oh、oh…)
ねじ伏せられた怒りよ (oh、oh)
見て見ぬ振りしなきゃ仲間外れか
真実の声も届くって信じていたよ
oh、oh…僕は嫌だ!
出典: 不協和音/作詞:秋元康 作曲:バグベア
2Aでは、周囲からの同調圧力に対し、「君」はどうするのかを問うと同時に、我々リスナーにも同じ問いを投げかけています。
理不尽と分かりながら、黙って軍門に下る(争いに負け、降参するの意)のか。
それとも同調圧力に屈し、プライド“さえ"捨てて、自分の意志に反して「YES」と言うのか。
そんな選択を迫られる「君」は、既にプライド以外にも何か捨てているように思え、未だ反論することに怯えているようです。結果、「僕」の説得も虚しく、大きな力に屈し正しさよりも、周りとの調和を選択し、仲間さえも裏切ってしまいます。
そして“真実の声も届くって信じていたよ"のフレーズからも読み取れるように、真実や正しさを訴え続けることで何かが変わり、仲間とも分かり合えると信じていた「僕」の願いはくしくも叶わなかったのだと思います。
それでもまだ諦められない。しかし完全に孤独になってしまった事を悟った「僕」は、絶望にも似た感情を込めて、再び声を上げて叫ぶのでした。“僕は嫌だ!"と。
作られた既成概念
不協和音で 既成概念を壊せ!
出典: 不協和音/作詞:秋元康 作曲:バグベア
みんな揃って 同じ意見だけではおかしいだろう
意志を貫け! ここで主張を曲げたら生きてる価値ない
欺きたいなら 僕を抹殺してから行け!
これまでの歌詞・描写から分かるように今の「僕」は完全孤立状態。
それでも未だ自分の意思は曲げずに、力強く訴えています。
また“欺きたいなら 僕を抹殺してから行け!"というアイドルソングには到底似つかわしくない言葉は、現代社会に蔓延る同調圧力によって作られた既成概念に対して、自分を貫けない人々へのアンチテーゼであるように思えました。
不協和音の本当の意味
ああ 調和だけじゃ危険だ
出典: 不協和音/作詞:秋元康 作曲:バグベア
ああ まさか 自由はいけないことか
人はそれぞれバラバラだ
何か乱す事で気づく もっと新しい世界
僕は嫌だ!
調和というのは、本来バランスが取れていることを指す言葉です。それを危険であると捉えるのはどうしてなのか。それは、この楽曲で調和という言葉は周囲からの同調圧力を意味しているからです。
散々否定されてきた同調圧力、なぜここまで「僕」は周りに屈しないのか。
ここで、タイトルにもある「不協和音」の本当の意味が明らかになります。
普段はその不安定さから不快に感じることもある不協和音ですが、その危うさ故に、時には想像もしていないような新たな魅力を引き出すことがあります。
それは我々の日常でも同じで、何かを変えるには新しい、何か別の刺激が時には必要とされるのです。
つまり全員が全く同じ考えでは新しいものは生まれず、それなのに、世界が成り立っている(ように思える)わけですから、そこに甘んじてしまい、考える事を止めてしまう危険性があると考えているのです。
それを知っているからこそ「僕」は自らを犠牲にし、声を上げ、調和を乱す役割を演じ、この世の中にはまだまだ新しい世界や魅力があるという事を示そうとしてくれていたことに気が付くのでした。
不協和音であるという誇り
不協和音で 既成概念を壊せ!
みんな揃って 同じ意見だけではおかしいだろう
意志を貫け! ここで主張を曲げたら生きてる価値ない
欺きたいなら 僕を抹殺してから行け!
不協和音を 僕は恐れたりしない
嫌われたって 僕には僕の正義があるんだ
殴ればいいさ 一度妥協したら死んだも同然
支配したいなら 僕を倒してから行けよ!
discord!discord!Yeah!discord!!!!!!
出典: 不協和音/作詞:秋元康 作曲:バグベア
ラストのサビでは、これまでの1,2番と同じ歌詞が繰り返されます。
しかし「僕」の想いを知ってからでは、同じ歌詞でも言葉の説得力が一気に増してはいないでしょうか。
楽曲メロディの転調も相まって、周りと違うこと、自分が不協和音であることは決して悪くないと一貫して主張してきた「僕」の言葉の力強さがより強調されていると思います。
そして最後の“discord!discord!Yeah!discord!!!!!!"の一文。
これまでの不安や恐怖に立ち向かうよう、自分を強く鼓舞しているのと同時に、最後には不協和音である自分を誇りに感じているようにすら思えます。
きっとこの「不協和音」という楽曲は、その曲調のダークさとは裏腹に、人々の背中を押し、我々にも希望をくれる楽曲なのかもしれません。
MV感想とまとめ
さて、いかがだったでしょうか。
楽曲のクオリティも去ることながら、「不協和音」はMVやライブで見られる、完成度の高いダンスも見所で、MVでのダンスシーンでは「不協和音」感を表すために細かな制約を払拭し、センター・平手友梨奈と対峙したり撃たれるような振付が非常に印象的です。
また軍隊を思わせるような制服、行進をしながらの弓矢や盾を連想させる振り付け、そして何よりMVを通して笑顔は一切見られない徹底ぶりは、明らかに従来のアイドル像をぶち壊す、まさに「不協和音」を体現した作品と言えるのではないでしょうか。
当初は4thシングルは「不協和音」ではなく、同作の通常盤に収録されている「エキセントリック」が表題曲とされる予定であったということは、ファンの間では有名な話です。
どちらの楽曲も欅坂46らしさが表現されているのですが、彼女達のコンセプトの1つでもある「大人や社会という対象に対して動じることなく自己を主張していく」といったスタイルを、再度世間へと示す意図があったため、より衝撃的な内容である今楽曲が選ばれたのではないかと個人的には考えています。
そしてその戦略は見事に成功し、クールでメッセージ性の強い、笑わないアイドルとして、他のアイドルとはまた違った魅力を武器に、欅坂46は一気にその存在感を示したように思います。
勿論、実際はアイドルらしい一面もある彼女達。他のアイドルにも引けを取らない素敵な魅力が沢山ありますよ!!とファンとしては声を大にしてお伝えしておきたいですね(笑)
アイドルという職業柄、世間からは謂れのない事を言われるも多いかもしれません。ましてや従来のアイドル像とは別の道をいこうとしているわけですから、その道のりは前途多難であると思います。
それでも決して過度に媚びは売らずに自分たちの道を進んで欲しいという秋元康さんから欅坂46へ送られたメッセージも込められた楽曲のようにも思えました。
長くなりましたが今記事をご覧頂いた皆様、ありがとうございました!!