本当は甘くて切ない失恋ソング!? / 日向坂46『キュン』歌詞の意味と解説
秋元康がプロデュースする、乃木坂46,櫻坂46(欅坂46)と続く坂道グループの「日向坂46」
今回は、そんな彼女たちのデビューシングル「キュン」の解説をしていきたいと思います!!
当ブログでは初登場の日向坂46は、元々は欅坂46のアンダーグループとして、当時の欅坂46メンバー長濱ねるを中心に、2015年11月30日に発足したけやき坂46がその前身となります。
日向坂46に改名するまでは、けやき坂46としてZeppツアーや代々木第一体育館での単独公演、2018年には日本武道館で開催予定だった欅坂46単独公演(全3日のうち2日間)の中止を受け、急遽、日本武道館3DAYS公演を行うなど、ライブ活動は活発に行っていましたが、デビューに至るまで中々の苦労を経験していたようです。
ですが、そんな彼女達の努力が認められ、2018年6月、けやき坂46名義での単独アルバム「走り出す瞬間」をリリースするに至り、そしてけやき坂46としての活動から3年4ヶ月。悲願であった単独シングルリリースの発表と共に、日向坂46への改名も発表。満を持して発売されたのが、このデビューシングルの「キュン」なのです。
キュンとは
「キュン」は日向坂46のデビューシングルとして、2019年3月27日に発売。
その発売初日には約36万枚、発売初週に約47万6000枚を売り上げ、欅坂46の「サイレントマジョリティー」の記録を上回って、女性アーティストの1stシングル初週売上枚数の記録を更新しました。
また、今楽曲のMVでは、SNSでも話題となった可愛らしい「キュンキュンダンス」も印象的で、歌詞の内容も甘酸っぱい恋心を歌ったアイドルらしさ全開の楽曲となっています。
「キュン」と聞くと、今ではTiktokから流行に火がついた「きゅんです」を連想させますが、この楽曲では、恋に落ちた時のときめきを表現しているようです。
そんな「キュン」は、作詞を秋元康、作曲は野村陽一郎が担当しており、野村陽一郎は同グループの2枚目シングル「ドレミソラシド」の作曲も担当されています。
不意に訪れる恋の予感。そしてときめきの感情。
どのようなタイミングで、どのような恋模様が描かれているのでしょうか。
そんな「キュン」の魅力、歌詞に秘められたメッセージを考察していこうと思います。
皆さんも是非こちらを参考に歌詞の意味を御自身なりに読み解いてみてください!!
始まりの音
キュンキュンキュンキュン どうして
キュンキュンキュンキュン どうして
I just fall in love with youキュンキュンキュンキュン 切ない
出典: キュン/作詞:秋元康 作曲:野村陽一郎
キュンキュンキュンキュン 切ない
You know, I can’t stop loving you
曲の歌い出しはキャッチーなサビから始まります。その中でも何度も繰り返される「キュン」のフレーズ。
これは恋に落ちてしまった瞬間に響く音として、様々な楽曲や漫画などでもよく使われていますよね。
そんな「キュン」というキーワード、今楽曲内でも恋に落ちた瞬間のときめきを表現しているようです。
また歌詞の中に“I just fall in love with you"とあるように、ここで既に主人公が「君」に恋をした様子が表現されています。
ですが、“どうして" “切ない"との表現も使われていることから、主人公は自分でも恋に落ちた理由が分からないのではないかと考えられます。
どうやら今楽曲の主人公は、これまでにあまり多くの恋愛を経験してこなかった、そんな人物なのでしょう。
そんな主人公がの「キュン」となる、初めての感覚・気持ちがどんどん募っていく恋の模様が、これから描かれていきます。
そうした背景からして、サビの最後“You know, I can’t stop loving you"は、自分でも制御の効かないこの恋を止められない様子を現していると思われるので、愛さずにはいられないと訳す方がしっくりくるかと思います。
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一目惚れ
Sunday なぜなんて
出典: キュン/作詞:秋元康 作曲:野村陽一郎
Monday 聞かないで
Tuesday きっと 理解できないだろう
Wednesday 毎日
Thursday 見かけて
Friday 思い続けて来た Saturday
Aメロでは日曜日から土曜日までの、とある場面での1週間の様子を描いています。
後ほど正確な場所が判明するのですが、場面は通学の際の電車内。そんな車内で毎日・同時刻に乗り合わせる2人。
主人公はそこで出逢った「君」のことを毎日想っているようですが、歌詞から考察するに、恐らく2人の接点は全くなく、関係性は名前も知らないような間柄のようです。
そんな関係性という事もあり、周りの友達や「君」自身に気になっている理由を聞かれたとしても、何故気になっているのか、主人公本人ですら、その理由は今は定かではないようです。
この時はまだ「君」が少し気になる程度だった存在。それが毎日見かけるうちに、どんどん想いが募っていく。
そんなよくある一目惚れから始まった今回の恋。続きが気になりますね。
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もどかしさと嬉しさと焦る心
もっと 会いたい なんて 不思議だ
出典: キュン/作詞:秋元康 作曲:野村陽一郎
きっと 僕は声を掛けられない
目と目 会うと 胸が締め付けられる
さて。電車内だけとはいえ、毎日「君」に出会っているにも関わらず“もっと会いたい"という想いばかりが募る主人公。
気になる「君」に少しでも近づきたくて、色々なシミュレーションを頭の中で試しては、今日こそは声をかけよう!!と意気込むものの、中々声が掛けられないようです。(ここで主人公=僕と判明、男の子→女の子への恋の様子だと分かります)
そんなもどかしい気持ちを抱えながら、ついつい気になり視線を送っていると、ふと「君」と目が合ってしまいます。その瞬間嬉しい気持ちの反面、「君」をじっと見つめていたということがバレてしまうのではないかという焦る気持ちの両方に加えて、大好きな「君」への想いが一気に溢れたせいで「僕」の胸が締め付けられているのでしょう。
不思議と凄く共感出来てしまう「僕」のこれらの気持ち。
甘酸っぱいドラマのようで。いやー、青春って感じが羨ましいです。(笑)
“可愛い“="好き"!?
電車の窓 手鏡代わりに
出典: キュン/作詞:秋元康 作曲:野村陽一郎
春の制服 そっとチェックして
腕に巻いてた真っ黒なヘアゴムで
ポニーテールに髪を束ねた
「可愛い」
「君」から目が離せない「僕」
電車の窓を見ては、制服のボタンや襟をチェックする様子や、腕に巻いていた真っ黒なヘアゴムで、ポニーテールに髪の毛を束ねる「君」の姿を目撃してしまい、思わず一言。
「可愛い」
と呟いてしまいます。さすがに電車の中なので、「僕」の心の中だけの呟きだと思われますが、「僕」が「君」に完全に恋をしてしまった瞬間を「好き」というストレートな言葉とは違った表現をしています。
まだ素直に気持ちを伝えることの出来ない「僕」なりの告白のような、そんな意味合いも感じ取れる一言ですね。
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加速する恋
君のその仕草に萌えちゃって
出典: キュン/作詞:秋元康 作曲:野村陽一郎
あっという間に虜になった
静電気みたいにほんの一瞬で ビリビリしたよ
何もなかったようにさりげなく
遠い場所から見守っていよう
そんな思いさえ 気づいていない
余計に君を 抱きしめたくなった
キュンキュンキュンキュン しちゃった
キュンキュンキュンキュン しちゃった
I just fall in love with youキュンキュンキュンキュン 愛しい
出典: キュン/作詞:秋元康 作曲:野村陽一郎
キュンキュンキュンキュン 愛しい
You know, I can’t stop loving you
ここからサビに突入します。
“君のその仕草に萌えちゃって"とは、先程Bメロでの“春の制服 そっとチェックして" “ポニーテールに髪を束ねた"といった「君」の何気ない仕草。このときの衝撃を「僕」は静電気のビリビリと表現しているのですね。
「僕」が一目惚れしてしまい、雷が落ちたような瞬間を表しています。
こうして完全に「君」の虜になってしまった「僕」ですが、まるで何もなかったかのように、その想いを伝えようとはしないようです。
本当は自分の気持ちに気付いてほしい。今すぐにでもこの想いを伝えたい。そう思ってはいるのでしょう。
ですが、一方的かもしれない一目惚れの恋で、いきなり声をかけるなんて勇気が湧くはずもなく、同じ電車の中で遠くから見守るので、“今は精一杯"なのでしょう。
そんな複雑な想いを抱える「僕」の想いにも気付かず、「僕」とは対照的な、まるで恋とは無縁に思える純粋な「君」を、抱きしめたくなる程に愛おしく感じ、より一層好きになっていく「僕」なのでした。
確信へ
そうさ あの日から ずっと気になって
出典: キュン/作詞:秋元康 作曲:野村陽一郎
君のことで頭がいっぱいだ
夜が来ても なかなか眠れないんだよ
電車の中に 紛れ込んできた
モンシロチョウが肩に留まった時
君は両手で そっと捕まえて
開けた窓から逃がしてあげた
「好きだよ」
恋に落ちたことを自覚したあの日から「君」への想いばかりが募り、あれこれと考えては、時間ばかりが過ぎていき「僕」は眠れない夜を過ごしているようです。
今楽曲のような初々しい恋に限らずとも、「僕」が置かれている、この状況に共感出来る方も多いのではないのでしょうか。
そんな日々を過ごしていた、ある日。
電車の中で再び見かけた「君」、今度は電車の中に紛れ込んでしまったモンシロチョウを両手で優しく包み、窓の外へと逃してあげる、そんな瞬間を「僕」に目撃されてしまいます。そんな「君」の優しさ溢れる行動を見た「僕」は、思わず。
「好きだよ」
と、またもや「君」への気持ちが溢れ出してしまいました。
1番での「可愛い」というフレーズでは表現出来ない、抑えきれない程の想いが「好きだよ」という真っ直ぐな気持ちがより強調される表現に変わったのだと思います。
決意表明
僕にできることは何でもしよう
出典: キュン/作詞:秋元康 作曲:野村陽一郎
君のためなら何でもできる
真っ白な心 汚れないように守ってあげたい
僕にできないことも何とかしよう
言ってくれたら力になるのに…
叶わぬ願いの独り言さ
好きと言うのは反射神経
気になるだけの存在だった「君」への想いが「好き」だと確信に変わった「僕」は、自分に出来ること、そして出来ないかもしれないことでさえも何とかしたい、何とか出来るかもしれないと思えるようになりました。
それほどまでに本気の恋を「君」にしているのでしょう。
それと同時に「僕」の想いに気付かないような恋愛への鈍感さ、チョウを優しく逃してあげるような純粋で真っ白な「君」の心が汚れないよう、「僕」が好きになった「君」を守ってあげたいと密かに決意した主人公。
ですが、それは誰にも伝えられない、そして報われることのない想い。
“叶わぬ願いの独り言さ"と、自分でも悟っているようです。
とはいえ、そんな気持ちとは裏腹に自分ではコントロール出来ないのが恋というものです。
叶わぬ恋だとしても「君」を想う度に、「僕」の鼓動は「キュン」と鳴り、その度に心の中では反射的に「好き」と繰り返し、呟いてしまうのでした。
本当の始まり
そんなことでキュンとするの?
出典: キュン/作詞:秋元康 作曲:野村陽一郎
君に笑われちゃうね
思いがけない タイミングで そう ときめいた
この感情 息が止まる
きっと言ってみたって ピンと来ないさ
出典: キュン/作詞:秋元康 作曲:野村陽一郎
僕が勝手にキュンとしただけ
こうやって人は恋に落ちるのか
始まる瞬間
周りからすれば笑われてしまうような、きっと相手にも理解されないような、何でもない仕草や行動がキッカケで恋に落ちることもきっとあるでしょう。
「僕」にとっては、髪を束ねる仕草やチョウを逃してあげる「君」が特別可愛く思えて、自分でも思いがけないタイミングで恋をしてしまいました。
きっと他の誰かでは、こうはならなかったのではないでしょうか。
沢山の想いが交錯し、恋に落ちたと気付いた瞬間の感情は、思い出すだけで呼吸すら忘れてしまうような衝撃だったのだと思います。
誰もがピンと来ないような、それでも自分にとって特別な恋だからこそ恋に落ちることがどういうことなのかを理解できたのでしょう。その瞬間「僕」の「君」への恋が、本当の意味で始まったのだと思います。
出した答え
君のその仕草に萌えちゃって
出典: キュン/作詞:秋元康 作曲:野村陽一郎
あっという間に虜になった
静電気みたいにほんの一瞬で ビリビリしたよ
何もなかったようにさりげなく
遠い場所から見守っていよう
そんな思いさえ 気づいていない
余計に君を 抱きしめたくなった
キュンキュンキュンキュン どうして
キュンキュンキュンキュン どうして
I just fall in love with youキュンキュンキュンキュン 切ない
出典: キュン/作詞:秋元康 作曲:野村陽一郎
キュンキュンキュンキュン 切ない
You know, I can’t stop loving you
これまでの「君」への様々な想いを抱きながら、ラストのサビに突入します。
1番サビでは一目惚れをしたものの、その気持ちは打ち明けないでいた「僕」の様子を表していました。
しかしラストサビ前で「僕」にとっての特別な恋が本当の意味で始まり、その想いを打ち明けるのかと思いきや。
「僕」は最後まで「君」への想いを伝えようとはしないようです。
今はまだ伝える勇気がないのか。このまま良い思い出として心にしまっておきたいからなのか。
理由は定かではありませんが、今はまだ「僕」の片思いのまま、この物語は終わりを告げるのでした。
MV感想とまとめ
さて、今回は日向坂46「キュン」の歌詞解説・考察をしてきました。
甘酸っぱい、初恋のような恋愛模様を題材とした曲でしたね。
そんな「キュン」のMVでは、日向坂46のグループカラーである空色の制服を着たメンバーが、学校の廊下や講堂などで楽しそうに踊っていて、とてもアイドルらしさ溢れる作品になっていました!!
爽やかさに加え、華やかさもある楽曲、MVである一方。
歌詞は「君」に恋をした「僕」の心の動きが鮮明に表された「キュン」ですが、初々しさ溢れる恋愛ソングであると同時に、個人的には失恋ソングでもあるように思えました。
勿論、ただただ悲しい失恋ソングではありません。
主人公である「僕」にとって、特別で本物の恋をしたからこそ、「君」と会えるだけの毎日に幸福感や充実感を覚え、自分の知らなかった感情や感覚にも出会うことが出来たのです。
今回の恋が実ったのかどうかも分からない為、必ずしも、今回の恋のその全てが「僕」にとって良いものばかりではなかったかもしれません。ですが、大好きな人を見ているだけで、想っているだけで、満たされていく心を「僕」は確かに感じられたのです。
普通は好きと言う気持ちに正直になり、向き合うことで、結果はどうあれ、後悔なく次に進むことが出来るのではと思うのですが、今回の恋は主人公にとっては正解も不正解も何も分からないような初々しい恋。
最後まで自分の想いを伝えないまま、今は遠くから見守り、心に閉まっておく選択をしたのは、純粋な「君」を守りたかった「僕」なりの告白であり最大限の愛を表現したのではないでしょうか。
いつかそんな「君」への愛が、想いがしっかりと伝わって報われる日が来るのを願うばかりです。
歌詞の意味を読み解いていくと恋の魅力と素晴らしさに改めて気付けた、今回の歌詞解説・考察でした。
長くなりましたが今記事をご覧頂いた皆様、ありがとうございました!!